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あこがれ

「長い夜が明ける瞬間。それが世界で一番綺麗なときだと思うの。それまで夜空に凝縮されていた星の点が、空にとけて広がっていくみたいに、紺色のそらがじわじわと明るくなっていって、朝が来る事を教えてくれるの。いつのまにか東川には紺色だった頃の名残なんてなくなっていて、白っぽい空にもっと白い光の筋が何本も見えてきてね。ああ、これが祝福されているってことなんだなって。朝が、世界が、空が、わたしを迎えに来てくれたんだなって。夜になれた目にはちょっとまぶしくてさ。本当は怖いんだ。わたしも夜の星のように、眩しさに消されて溶けてしまうんじゃないかって。目を瞑ると、朝日がまぶた越しでも温かい。ああ本当に憧れていた……」

 何て美しいんだろう
 そう最後に呟いて、吸血鬼の彼女は塵になり朝日の中に消えた。


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